
水男の脳力日和
第一話 水男が速読にはまったIDEABANK
【プロダクト】こどものためのカメラ【異業種対談:つくる人々】アーティスト×科学者
質問者
質問1
Q.日本人は元々手先が器用で,計算力も高いので,技術系に向いている人種
であると思うのですが,アートの世界では,日本人の素質というのは世界的に見てどうなのでしょうか?
回答者
A現代の日本人が手先が器用、計算力が高いという実感はまだ無いのですが、
確かにそういう一面に秀でた仕事の話は聞いたりします。とてもうれしい話だと思います。
実感的にあるのは、日本人は作業が丁寧だったりするので、比較的奇麗に仕上げるのが上手だと思います。
特に、間の表現は日本人が巧みだと感じています。あと、普通な優しさみたいな感覚を表現した物は
独特に良いものが多いと感じます。
質問2.
Q.科学・技術の世界も,素晴らしい成果(製品,実験結果,方程式など)
は,研究者から見てアートと感じられます.例えば,『完璧な理論の方程式には美
しさを感じる』,というようなものです.そのような感覚を持つということ
は,アートの世界の人から見ても理解できるものでしょうか?
A.完璧な理論の方程式、感覚的な勘としか考えられない発見的な実験結果など、
科学にもアートで感じるような美しさが色々存在するというのは明白だと思います。
しかし、アーティストは人と違った視点で物事を捉える事には秀でていますが、同時に一般人でもあります。
一般的にわかりやすく説明される場合には、「その成果がどのように役立つのか?」など
応用されたものが多いのが現実です。そういった一連の説明の仕方だと、アートとして素直には見難くなるのが本音です。
しかし、説明の仕方が違うだけで根源的な部分のつながりは強く感じます。
また専門性が強く、話のスタート地点が高いというか、「完璧な理論の方程式の美しさ」の類いは
なかなか伝わってきません。うらやましいです。
質問3
Q.最近、ロンドンのサイエンスミュージアムで日本車の展覧会が開かれたそ
うなのですが、それは,技術・商品展示ではなく,「自動車」という技術を通しての
「日本文化」の紹介だといいます。日本車には他国の車にはない,「文化性」があると思いますか?
思うとすれば,どんな点でしょうか?
A>もちろんあると思います。アートでもデザインでも、その作品が「生まれ、発展・進化した場所」、というのはとても重要な要素です。「自動車」は、使用される状況・環境、ファッションなどの文化的な側面を飲み込みながら、より良く日本で親しまれ、所有されるデザインを追求し続けたわけです。そこに日本独自の文化性が生まれるのは自然だと思います。ただ、僕自身「自動車」を所有していないので、実感のある言葉が出てきませんが。なんとなくデザインが優しさ方向に進化していると思います。
質問4
Q.自動車だけでなく他のハイテク製品や電気製品(ロボット、カメラ、テレ
ビ、携帯電話・・・)も,日本製は他の国のものよりもデザインが優れている
と私には感じられるのですが,アートの専門家から見ても,同じように感じますか?
また,日本製品のデザインは,単なるデザインを越えて,日本の文化として世界に通用すると思いますか?
A.ハイテク製品や電気製品というのは、SFの世界を追いかけていたりしますよね?特にここ数年のi-phoneとか、企業・大学が開発したロボットなんかはまさに一昔前のSFの世界です。日本の一連のデザインを見ていると、優れた想像力で描かれたアニメ、漫画などの影響が強い気がします。デザイン哲学よりも、子供の頃想像したような夢を実現させる力の方が強いのではないでしょうか。アーティストの八谷和彦さんの「オープンスカイ・プロジェクト」では、「風の谷のナウシカ」のメーヴェで空を飛ぼうとしていますしね。美しい機体です。
質問5
Q.日本の建築・庭園などには,独特の”非対称性”がありますが,非対称性という美意識は,日本固有のものなのでしょうか? 欧米のアートは対称性を重視しているように感じられるのですが,それは素人が感じるだけのことなのでしょうか? 昨年のノーベル賞受賞者,小林・益川理論も「対称性の破れ」でしたし、日本人は,サイエンスもアートも非対称性に美しさを感じるものだと思われますか?
A.ルネサンス建築の整然とした対称性など、歴史的に考えると、日本・欧米の美意識には確かにズレがあります。しかし現代では対称性により社会のズレを表現したりしますので、一概にそうとも言えないです。只、美意識には育つ環境が強く影響するので、小さい頃にルネサンス建築に神聖なものを覚えたりするなど考えれば、対照的なものを求めたりするのかもしれません。自分の育った環境をベースに考えると、川岸に建つマンション群だとか、の連続性に魅かれる事は多々あります。対称性・非対称性という事が薄れ、連続性と量、時間軸による変化をより強く風景から感じます。見えるものだけ考えると、変化するという事は非対称という事でしょうか。
質問6
Q.非対称性の美意識が日本固有のものならば,それを前面にだしたアートや
製品として,具体的なものはありますか?
A.現代では非対称性と言うか、分かりやすく言うとズレに着目しているアーティストが多いと思います。
また、「違った視点で世界を観る」といったことが現代のアートでは日本でも世界でも重要視されているので、日本固有とは言えないと思います。
見えるもの・かたちに関してだけだと、逆に対称性を持つ優れた作品を持つものを思い出す方が悩みます。
質問7
Q.「アート」は”文化”(多少ともローカル;国民性などを反映),「技術」は”文明”(普遍的、グローバル)だと
思うのですが、 この両者を健全につなぐ可能性はあると思いますか?
あるとすれば、具体的にどんな形が考えられるでしょうか?
A.アートはその時代で生きたリアクションでもあるので、文明とは簡単に繋がると思います。技術は役に立つし影響力もあるので、すぐに一般化され世界にあふれますから。ただ、アートは直接役に立たないものが多いです。しかし、人の心を動かす力はあります。アートは役にたつものを役に立たせなくする事が多いので、アートっぽいデザインとなら健全な関係を持ちやすい。というより持っていると思います。僕も今、ナノテクノロジーなど、新素材の布を用いて著名なデザイナーやアーティストが作品を制作・展示するという企画に参加しています。そこではまさに技術と表現が組合わさっているので、是非ご覧いただきたいです。(ミラノですが)
http://tokyofiber.com/
質問8
Q.日本の科学には,西欧的科学とは異質の「あたたかさ」があると言う人達もいます.
「アート」側の人たちは,そのような話を,たとえば寺田寅彦や
朝永振一郎の有名な「随筆」を通して,聞いたことがありますか?
そしてそういった話は,「アート」の世界と関係があると感じるでしょうか?
A.異質のあたたかさを日本人のアート作品、物語から感じる事がよくあります。
「普通に優しい」というか、そのような感じのものです。
一般的に分かりやすくいうと、宮崎駿監督作品を見る感覚ですかね。
それが、本当に世界的に理解されているのであろうか?という若干の不安があるくらい
異質だと思います。